食品偽装を見破ってみた

巷にあふれる食品偽装をプロの目から見破ってみました

大豆が入っていてもアレルゲンフリー!?

前回の記事では、複合原材料のルールを用いることで表示が簡素にできる代わりに、食品添加物の表示を合法的に減らすことができると説明しました。今回は、その方法と考え方について説明します。

 

まずおさらいですが、複合原材料のルールとは

 

いくつかの原材料が複合されたもの。「鶏のから揚げ」だったり「ホットケーキミックス

 

だったりします。この複合原材料にあたるものの場合、食品表示する際には次のルールがあります。

【複合原材料の原材料が3種類以上ある場合にあっては、当該複合原材料の原材料に占める割合の高い順が3位以下であって、かつ、当該割合が5%未満である原材料については「その他」と表示することができます。】

(東京都福祉保健局の説明から抜粋)

簡単に言うと、

【複合原材料の場合、使われている材料の重さが上位2番目までは表示しなさい。3番目以降については5%より重ければ表示、軽ければ「その他」としてまとめていいですよ】

となります。

ここからややこしくなるのですが、極端な話、3番目以降は5%以下の使用にしてやれば表示を免れることができますので、例えばアレルゲンが含まれる大豆やアーモンド、遺伝子組み換え作物がある大豆やとうもろこしについて、3番目以降は5%以下の使用にすることで、あたかも使用していないように表示することが可能になります。普通の会社なら、複合原材料の考えで表示から消す場合、アレルゲンについては別枠でアレルゲン情報を記載しますが、記載しないメーカーも存在します。

実際に私が体験した話ですが、あるミックス粉(ホットケーキミックスやてんぷら粉を想像してください)に、大豆を使用した複合原材料を使用しているメーカーがありました。そのメーカーから、『大豆を使用している製品をアレルゲン表示せずに販売しているが問題ないか?』との問い合わせがありました。もともと、大豆はアレルゲン表示が義務化されていないため表示をしなくても問題ないものの、健康被害が出る可能性がありよろしくないことを説明しました。ちなみに、食品企業なら名前を聞けばわかる規模の会社です。もし、複合原材料のルールがなければ大豆が使用されていることが表示からわかりますが、このルールのせいで表示されなくなったわかりやすい例です。

怖いのは、私のように表示ルールに詳しい人がその製品の表示を見せられても大豆を使用していることが判別できないことです。どれだけ知識を身に付けても、安全なのかどうか判断するのは難しく、企業側の姿勢に任せざるを得ない状況であることは、消費者にとってよろしくない状況ですので、改善されることを望んでいます。

 

似たようなケースで【キャリーオーバー】や【加工助剤】というものが存在します。こちらについては次回以降で説明いたします。

まとめることで上手くいく!?複合原材料って何?

前回は実際の食品表示を見ながら説明と記事に書きましたが、その前に食品表示をスマートにする代わりに何が使われているかわかりにくくしている『複合原材料』について解説したいと思います。『複合原材料とは何か?』というと、いくつかの原材料が複合されたものです。そのままですね。もっと簡単にいうと、「鶏のから揚げ」だったり「ホットケーキミックス」だったりが該当します。例えば、「鶏のから揚げ」は鶏、小麦粉、植物油脂、しょうゆ・・・などが混ざって作られているますが、これを全部表示していると、弁当なんかだといくらスペースがあっても足りなくなってしまいます。なので、なんとなくこんな感じの食品だなとわかるものはまとめて書いていいですよというのが、『複合原材料』になります。

 

実際の表示では、「鶏のから揚げ」として1つの表示になっていたり、「鶏のから揚げ(鶏肉、小麦粉、植物油脂など)」というように使用されている原料で3番目くらいの重さものまで記載されているパターンなどがあります。ここの注意点ですが、『複合原材料』の表示を利用した場合は、確実にその『複合原材料』の部分には食品添加物は記載されていません。これは食品添加物を使用していないのではなく、基本ルール❷の食品素材と食品添加物素材は分けて記載する、に則り、食品の後に記載されることになります。弁当を買うときに、おっこのから揚げ無添加じゃん、って勘違いしないように注意してください。

 

この『複合原材料』のルールにより、メーカー側としては表示に割くスペースを減らすことができるメリットがありますが、消費者側には特にメリットがありません。むしろ、何が入っているのかわかりにくくなってしまうので好ましくありません。実際に『複合原材料』を利用していることで表示がわかりにくくなっているものの代表例が、即席麺になります。即席麺の食品表示は大抵一番最初に「麺」が来ます。もし家に即席麺があれば見ていただきたいのですが、大体この「麺」は『複合原材料』の考えで記載されており、「油揚げ麺(小麦粉、植物油脂、食塩・・・)」などと記載されています。前述のとおり食品添加物が一切入っていないように見えますが、実際は「加工でんぷん」と呼ばれる食品添加物ががっつり使用されていることが多いものの、基本ルール❷に従って食品の後に記載されています。食品添加物は通常使用量が少ないのですが、即席麺の場合だと10%以上入っていることもあるのに、使用量の少ない調味料などの後に記載されるため、あまり入っていないようなイメージを受けます。全体の10%以上が食品添加物と聞くと、食べて大丈夫なの?と心配になりますよね?そもそも、それって食品なの?という疑問も聞こえそうです。でも、心配しないでください。「加工でんぷん」の歴史は古く、十数年前に法改正で食品から食品添加物に変更になっただけで、特に体に毒というわけではありません。むしろ、長時間品質を維持するのに重要な役割を果たしており、加工食品の強い味方となっております。ここでは、『複合原材料』のルールにより使用されている原料がわかりにくくなることがある例として使用させてもらっただけです。即席麺業界では一般的に使用されているようなのですが、この表示方法を考えた人は天才だと思います。その理由は食品表示のルールとはあまり関係のない話なので、何かの折に説明するかもです。

 

で、これの何がいけないのか?ということですが、このルールを悪用すると、使用している食品、食品添加物を合法的に表示から消すことが容易になります。どういうことか?そこについては、次回以降、私が体験した実例を用いて紹介させていただきます。

実際の食品表示の見方

前回は食品表示の基本ルールを説明しました。食品表示の基本ルール、それは・・・

❶重量の重い順から記載する(※水は除く)

❷食品素材と食品添加物素材は分けて記載する

❸各々の名称は一般名称で記載する(※例外多数あり)

の3点でいたってシンプルですが、なぜ食品偽装はなくならないのでしょうか?

そこを理解いただくために、実際の食品表示を見ながら解説していきたいと思います。

 

利用するのは前回と同じく、イオンで販売されているミートレスハンバーグの食品表示になります。本日は重点的に❶について解説していきます。

 

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まず、重いものから順に記載すると説明しました。そのルールに則って考えると、この商品で最も多く入っているのは粒状大豆たん白になります。粒状大豆たん白は何かというと、大豆から油を搾ったかすを加工して、高たんぱくの食品にしたものです。中価格~低価格のハンバーグなどにはよく使用されており、他にも粉状の大豆たん白や小麦たん白などもあります。ここで重要なポイントですが、重さの順番はわかってもどれだけ入っているかは、食品表示ではわかりません。(注:入っている食品の数や栄養成分からある程度推察はできます)あくまで、わかるのは入っている原料の重い順だけです。

 

さて、では2番目以降を見ていくと、ソテーオニオン、トマトペーストと続きます。前回の記事ではソテーオニオン(炒めた玉ねぎです)、トマトペースト(ペースト状のトマトです)と書きました。なぜ食品表示に出ていない()みたいな表記をするのか気になった方もいると思います。これは説明をするためにあえて書いています。どういうことかというと、食品表示の前から8番目を見ていただきたいのですが、トマト・ピューレづけという記載があります。これはこの製品で8番目にトマト・ピューレづけという原料が入っていることを意味していますが、3番目のトマトペーストもトマトを使用しているのに、なぜ分かれているか不思議ですね。これが食品表示をややこしてくしている原因の一つになります。どういうことかというと、これはその製品に2種類以上のトマト原料が使用されていること、また、この製品を作ったメーカーですら、細かいトマトの使用割合がわからない、もしくは開示したくないことを意味しています。

 

より詳しく説明してみます。まず、製品に2種類以上のトマト原料が使用されていることというのは、このハンバーグを作ったメーカーが、原料メーカーから「トマトペースト」と「トマト・ピューレづけ」という、トマト原料を買って使用していることを意味します。で、「トマトペースト」ということは、塊のトマトではなくペースト状に加工されたもの、「トマト・ピューレづけ」とは、ピューレぐけされたトマトを使用していることを意味します。では、このトマト原料にどれだけのトマトが使用されているでしょうか?・・・恐らく原料メーカーでもわからないと思います。だって、トマトは自然のもので毎回同じ味のものができるわけではないですし、そうなると毎回使用するトマトの量が異なるので、これだっ!!て決めることが難しいです。そうなると、本当は「トマト」と記載したいけど、どれだけ使用しているかわからないため記載できないという状態に陥ります。そこで、❸各々の名称は一般名称で記載する、の出番です。一般名称とは、一般にわかる言葉という意味で、トマトピューレと言われると誰でもどんなものかわかりますよね。そうやって一般名称で記載することで、一括りにしてやることで、入っている量がわからないものでも、❶重量の重い順から記載する、を守ることができるように無理矢理調整しています。

 

ここで問題になるのが、「トマトペースト」にはトマト以外のものが使用されている場合があるということです。食品表示のルール上、こういった一括りにされたものについては、中身の細かい原料は開示しなくてよいというルールがあります。そのため、中に塩・胡椒が入っていようが、入っていなかろうが、同じく、「トマトペースト」と記載できます。そんなの不親切だと思われる方もいるかもしれませんが、食品表示には記載できるスペースに限りがありますし、「トマトペースト」に塩が入っていようがいなかろうが、最終的な味がおいしければ問題ないという人が大半だと思います。だから、こういった運用にしていると思われます。もし、「トマトペースト」にアレルゲン(簡単に言うとアレルギーを引き起こす物質)が入っていたらどうするんだという方もいるかもしれません。そこについては別にルールがあるので問題ありません。

 

長々となってしまいましたが、本日のまとめは

・「トマトペースト」のように一括りにされる場合がある

・その場合は、中身の細かい配合はわからない

・でも、違反じゃない

ということになります。ちょっと難しいですよね。だから食品偽装が出てしまうわけです。

 

次回もこの製品の表示を見ながら、より詳しく説明をしていきたいと思います。

 

 

1分でわかる食品表示の基本ルール

皆さんは食品表示のルールを勉強したことがありますか?

重量順で記載?食品添加物は?そもそも名称なんてわからない?

などなど、なんだか聞いたことはあるけど細かくは知らないというのが実情だと思います。私も食品メーカーで働いていなければ知ることもなく、日常生活を送っていたと思います。また、調べようと思っても、法律って簡単なことを難しく書くことに神経を注いでいるのかと疑いたくなるくらいに、難しい言葉で記載されているために、一度読んだくらいでは全く内容が理解できません。

そこで、私がサラリーマン生活で身に付けた1分でわかる基本ルールを紹介いたします。

 

食品表示の基本ルール、それは・・・

❶重量の重い順から記載する(※水は除く)

❷食品素材と食品添加物素材は分けて記載する

❸各々の名称は一般名称で記載する(※例外多数あり)

の3点になります。実際は、業界内での自主ルールなどが多数あるため、完璧に理解するには3つでは足りませんが、消費者視点で考えるとこの3つで十分です。

 

どうですか?3つのルールなら1分で覚えられたと思います。

では、実際の商品の食品表示を見ながら簡単に説明したいと思います。

下の図は、イオンで販売されているミートレスハンバーグの食品表示になります。ものすごく綺麗な表示なので説明にぴったりだと思い、ピックアップさせていただきました。

 

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食品表示サンプル

 

図の真ん中あたりにある原材料名というのが肝心の食品表示になります。

まずは❶のルールに則って分解すると、粒状大豆たん白が最も多く入っており、次いでソテーオニオン(炒めた玉ねぎです)、トマトペースト(ペースト状のトマトです)と続きます。次に❷のルールになりますが、食品素材と食品添加物素材が一目でわかるように区別しなければならないといるサブルールがあります。今回の図でいくと、『さとうきび抽出物/調味料(アミノ酸等)』の『/』の部分に注目です。この『/』は、『/』の前までが食品素材、後ろが食品添加物素材ですよ、という印になります。まれに違う方法をとっていることもありますが、スーパー等では大抵この記載方法をになっていると思います。『/』であれば一目でわかるので、間違いようがなく消費者も理解しやすいです。

 

ここまで読み進めた段階で、もう一度❶に戻ります。『/』の前が食品素材のため、食品素材で考えると❶のルールにより粒状たん白が最も多く、さとうきび抽出物が最も少なく入っていることになります。そして、食品添加物素材では、調味料(アミノ酸等)が最も多く、ビタミンB1が最も少なくなります。さとうきび抽出物と調味料だとどっちが多いの?という質問が聞こえてきそうですが、ケースバイケースで食品表示からはわかりません。ただ、食品添加物は厳しく入れることができる量を決められているので、大抵の場合、食品素材よりも少なくなるケースが多いと思います。

 

以上でほぼ食品表示のルールはクリアしました。

 

って、❸は?と思われると思います。❸がある意味一番重要なのですが、ある意味重要でもない部分になります。食品メーカーらしく一般名称と専門用語を使いましたが、簡単にいうと一般的に使用される名称を使いなさい、ということです。例えば、ある砂糖メーカーが自社商品に「これとってもあまーくなーる」という商品名をつけていたと思います。でも、消費者はこの商品名を見ても砂糖とはわからないですよね。そこで、この商品を使っていても食品表示上は砂糖って書きなさいというのが❸のルールになります。

 

いかがでしたでしょうか?

これで読んでいただいた方も食品表示のプロに近づいたと思います。実際に、この❶~❸を知っていれば、食品表示から見破ることができる食品偽装の大半を見破ることができるようになります。「食品表示から見破ることができる食品偽装」と、少しわかりにくい書き方をしていますが、この辺りは今後、実例を用いながら説明していきたいと思います。

 

 

自己紹介

はじめましてjaikumaです。

 

食品偽装が頻発してニュースにはなるものの、食品表示やルールってどうなってるの?と調べても、消費者庁や保健所などが伝えるお堅い法律程度しか見つからない現状は消費者にとってもよくないと思い、筆(表現が古い?)をとってみました。

加えて、自分の頭の中の法律をリバイスする目的も兼ねております。

 

事項紹介ですが、プロフィールにあるとおり、

 ・都内在住の上場食品メーカーサラリーマン

 ・東京都の「食品の適正表示推進者」

 ・趣味で学校の先生たちに食品表示についてレクチャー

をしています。

 

保有資格は
・東京都の「食品の適正表示推進者」
サプリメントアドバイザー
消費生活アドバイザー2級
・ホームミールマイスター 

・食育メニュープランナー(肉、魚、野菜、穀物

囲碁3級(高校時代はアマ2段レベルと言われてましたが認定試験を受けていないので3級のまま)  などなど

 

基本的には法律をかみ砕いて説明していきますが、日頃見かけた食品偽装情報の解説も行っていきたいと思います。