食品偽装を見破ってみた

巷にあふれる食品偽装をプロの目から見破ってみました

実際の食品表示の見方

前回は食品表示の基本ルールを説明しました。食品表示の基本ルール、それは・・・

❶重量の重い順から記載する(※水は除く)

❷食品素材と食品添加物素材は分けて記載する

❸各々の名称は一般名称で記載する(※例外多数あり)

の3点でいたってシンプルですが、なぜ食品偽装はなくならないのでしょうか?

そこを理解いただくために、実際の食品表示を見ながら解説していきたいと思います。

 

利用するのは前回と同じく、イオンで販売されているミートレスハンバーグの食品表示になります。本日は重点的に❶について解説していきます。

 

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まず、重いものから順に記載すると説明しました。そのルールに則って考えると、この商品で最も多く入っているのは粒状大豆たん白になります。粒状大豆たん白は何かというと、大豆から油を搾ったかすを加工して、高たんぱくの食品にしたものです。中価格~低価格のハンバーグなどにはよく使用されており、他にも粉状の大豆たん白や小麦たん白などもあります。ここで重要なポイントですが、重さの順番はわかってもどれだけ入っているかは、食品表示ではわかりません。(注:入っている食品の数や栄養成分からある程度推察はできます)あくまで、わかるのは入っている原料の重い順だけです。

 

さて、では2番目以降を見ていくと、ソテーオニオン、トマトペーストと続きます。前回の記事ではソテーオニオン(炒めた玉ねぎです)、トマトペースト(ペースト状のトマトです)と書きました。なぜ食品表示に出ていない()みたいな表記をするのか気になった方もいると思います。これは説明をするためにあえて書いています。どういうことかというと、食品表示の前から8番目を見ていただきたいのですが、トマト・ピューレづけという記載があります。これはこの製品で8番目にトマト・ピューレづけという原料が入っていることを意味していますが、3番目のトマトペーストもトマトを使用しているのに、なぜ分かれているか不思議ですね。これが食品表示をややこしてくしている原因の一つになります。どういうことかというと、これはその製品に2種類以上のトマト原料が使用されていること、また、この製品を作ったメーカーですら、細かいトマトの使用割合がわからない、もしくは開示したくないことを意味しています。

 

より詳しく説明してみます。まず、製品に2種類以上のトマト原料が使用されていることというのは、このハンバーグを作ったメーカーが、原料メーカーから「トマトペースト」と「トマト・ピューレづけ」という、トマト原料を買って使用していることを意味します。で、「トマトペースト」ということは、塊のトマトではなくペースト状に加工されたもの、「トマト・ピューレづけ」とは、ピューレぐけされたトマトを使用していることを意味します。では、このトマト原料にどれだけのトマトが使用されているでしょうか?・・・恐らく原料メーカーでもわからないと思います。だって、トマトは自然のもので毎回同じ味のものができるわけではないですし、そうなると毎回使用するトマトの量が異なるので、これだっ!!て決めることが難しいです。そうなると、本当は「トマト」と記載したいけど、どれだけ使用しているかわからないため記載できないという状態に陥ります。そこで、❸各々の名称は一般名称で記載する、の出番です。一般名称とは、一般にわかる言葉という意味で、トマトピューレと言われると誰でもどんなものかわかりますよね。そうやって一般名称で記載することで、一括りにしてやることで、入っている量がわからないものでも、❶重量の重い順から記載する、を守ることができるように無理矢理調整しています。

 

ここで問題になるのが、「トマトペースト」にはトマト以外のものが使用されている場合があるということです。食品表示のルール上、こういった一括りにされたものについては、中身の細かい原料は開示しなくてよいというルールがあります。そのため、中に塩・胡椒が入っていようが、入っていなかろうが、同じく、「トマトペースト」と記載できます。そんなの不親切だと思われる方もいるかもしれませんが、食品表示には記載できるスペースに限りがありますし、「トマトペースト」に塩が入っていようがいなかろうが、最終的な味がおいしければ問題ないという人が大半だと思います。だから、こういった運用にしていると思われます。もし、「トマトペースト」にアレルゲン(簡単に言うとアレルギーを引き起こす物質)が入っていたらどうするんだという方もいるかもしれません。そこについては別にルールがあるので問題ありません。

 

長々となってしまいましたが、本日のまとめは

・「トマトペースト」のように一括りにされる場合がある

・その場合は、中身の細かい配合はわからない

・でも、違反じゃない

ということになります。ちょっと難しいですよね。だから食品偽装が出てしまうわけです。

 

次回もこの製品の表示を見ながら、より詳しく説明をしていきたいと思います。